アルミ合金の選定上のご注意
材料選定の基本の考え方
- 用途に応じての選定
強度、耐食性、装飾性、加工性の諸特性を総合して検討することが必要です。
すべてを満足するのは、難しく、諸特性の優先順位を決め、個々の項目について検討するのが基本です。
純アルミ系材料の考え方
- 1100、1200として知られる純アルミニウム板は、各種用途に用いられる。
- 純度99.00%以上
- 1100は、0.1%Cuを添加してあり、1200より強度的に有利。
- 耐食性は、1200が若干良い。
強度を重視した考え方
- 一般に、純アルミ系から、Al-Mg系、Al-Mg-Si系、Al-Cu系、Al-Zn-Mg系の順に強度が高くなる。
- 代表合金は、下記の通り
○Al-Mg系 5052、5083
○Al-Mg-Si系 6063、6061
○Al-Cu系 2014、2017
○Al-Zn-Mg系 7003、7204、7075、7050
- 引張強度
- 調質を含めると1080-0材の60N/mm2から、7075-T6の590N/mm2まで広範囲である。
- 機械部品などで耐食性を問題としない場合、または完全な防食を施す場合は、2014-T6、2017-T3、2024-T4、7075-T6材を用いることができる。
耐食性を重視した考え方
- 耐食性はその使用環境により大きく異なり、腐食促進試験と一致しないことも多い。
- 純アルミ系合金1100、1200を検討し、さらに耐食性が必要な場合は、1070、1080などの高純度アルミニウムを検討する。
- 実用的な腐食試験を行うなどの十分な配慮が必要。
- Al-高Mg合金、Al-Cu系、Al-Zn-Mg系合金では、使用条件により応力腐食割れが生じることがあるため、
応力値(含む残留応力)と環境(含む温度)を十分検討した設計が必要。
加工性からの考え方
- 切削加工用の材料では、切粉特性、挽目特性の他、耐食性、表面処理性、表面模様などもポイントになる。
- 一般に切削材料としては、2011が良く、6262がこれに次ぐ。(2011は、耐食性は劣る。)
- 一般に絞り物用としては、1100、3003、3004系が使用される。
- アルミ合金は、熱間押出性にすぐれるため、押出し加工により、種々の断面の形材が製造できる。
したがて、押出形材の断面形状を利用した材料の有効利用、成形加工の省略が可能となり、トータルコストを削減に寄与する。
溶接性からの考え方
- 溶融溶接(MIG、TIG)は、純アルミ系、Al-Mn系、Al-Mg系およびCuを含まないAl-Zn系合金ですぐれる。
- 例外としてCu量の多い2219は、溶接性に比較的にすぐれる。
- 溶接強度を重用視する場合、7204、7003が用いられる。
- 耐食性を重視する場合は、5083が用いられる。
溶装飾性からの考え方
- アルミ独特の装飾性は、光沢と色調によって代表される。
- クリアー塗装の場合の光沢は、板の圧延上がりの表面粗度や化学研磨などの処理に依存する。
- 陽極酸化処理後の光沢と色調は、その他にアルミの純度の影響が大きい。
- 一般に、クリアー塗装の場合、1050、1100などが適する。
- 一般に、陽極酸化処理の場合、純アルミ系板などが適する。
- 陽極酸化処理後の色調は、合金とその調質によって、かなりの差があるので、事前の相談が必要である。
プレコートカラーアルミ板発注に関して
- プレコートカラーアルミ板の色調は、社団法人日本塗料工業会の色見本帳を参照下さい。
- クリアー系など日本塗料工業会の色見本帳に掲載のないもの、特別な色調に関しては、ご相談下さい。
- エンボス加工を行うことができます。エンボス加工に関してはご相談下さい。
その他の特性の考え方、注意事項
- その他の特性として、導電性、耐摩耗性、耐熱性などを考慮する場合がある。
- 導電材としては、1060(61%IACS)、6101(55%IACS)がある。
- 耐摩耗性は、一般に強度に依存しており、Al-Si系合金やAl-Cu-Mg系、Al-Zn-Mg-Cu系合金がすぐれる。4032は、特に耐摩耗性にすぐれる。
- 耐熱合金としては、Al-Cu-Mg-Ni系の2018が使用される。
- 高靱性、高弾性、超塑性、などの新機能も含め、考慮して選定を行う。
- 弊社担当者との詳細な事前相談をお願いします。